最終更新日: 2015年12月21日
記者: 具志林太郎
佐地先生:心臓から肺に血液を送る血管を肺動脈といいます。肺動脈性肺高血圧症とは、何らかの原因で肺動脈が狭くなり、この肺動脈の血圧が高くなる病気で、いわゆる全身の高血圧症とは違う病気です。
肺動脈性肺高血圧症の初期症状としては、坂道や階段で息切れがする、疲れた感じやだるい感じがする、胸がドキドキする(動悸)、立ちくらみやめまい、運動時の失神などがあります。
佐地先生:問診や聴診など診察の結果、少しでも肺動脈性肺高血圧症が疑われる患者さんは、スクリーニング検査(血液検査、心電図、胸部X線、心エコーなど)に進みます。また、スクリーニング検査で、肺動脈性肺高血圧症の疑いが強いと判断された場合には、精密検査(心臓カテーテル検査、胸部CT検査など)に進みます。
佐地先生:現在、日本において小児の肺動脈性肺高血圧症の適応を取得している薬剤はボセンタンのみです。
その他、小児の適応はありませんが、成人の肺動脈性肺高血圧症の治療に標準的に使われている、ベラプロスト、エポプロステノール、シルデナフィル、タダラフィル、アンブリセンタン、リオシグアト、トレプロスチニル、マシテンタンなどの薬剤も小児の肺動脈性肺高血圧症の治療に使用されています。その中には、現在、小児の肺動脈性肺高血圧症に対する使用の承認を得るための治験を実施している薬剤もあります。
これらの薬剤以外にも、抗凝固薬、利尿薬、強心薬などが薬物療法として用いられます。また、酸素吸入療法を行う場合もあります。薬物療法や酸素吸入療法で十分な効果が得られない場合は、肺移植などの手術療法が行われます。
佐地先生:小児期に発症する肺動脈性肺高血圧症は成人とは大きく原因が異なり、特発性/遺伝性および先天性心疾患に合併する肺動脈性肺高血圧症が大半を占めています。肺動脈性肺高血圧症の病態解明や治療の進歩により、従来著しく不良であった肺動脈性肺高血圧症の予後は改善されつつあります。
また、現在、日本では小児の肺動脈性肺高血圧症に対する使用の早期承認のために治験が実施中であり、今後、日本における小児の肺動脈性肺高血圧症の治療が進展していくものと思われます。